言オリ風自作問題集
このページは未完です。そのうち埋めていきます(本当?)
形態論
音韻論
数体系
架空言語Geŋ語の数体系
問題
以下の架空言語Geŋ語の8つの数詞は、10,20,30,40,50,60,70,80のどれかに対応する: peŋ gwis-tik tig gwis-seɢ baɟ-lin seɢ gwis-pen med gwiz-lim baɟ-lin gwiz-med baɟ-lin liŋ gwis-seq tig gwiz-lin kob baɟ-lin このとき、 Q1: tig bac-tik × peŋ gwis-tik = ???(算用数字で) Q2: 16 = ???(Geŋ語で) 注意 ɢはqに、ɟはcに対応する有声子音を表す。ŋは軟口蓋鼻音を表す。軟口蓋とは、口蓋のうち硬口蓋より後部、口蓋垂より前部にあって、kやgの調音点と同じ部分を指す。
ヒント
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答え
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Q2: liŋ gwis-tik
解説
登場するパーツを整理しましょう。この言語では なので、 ここで、解説を見る
peŋ
gwis
-tik
tig
gwis
-seɢ
baɟ
-lin
seɢ
gwis
-pen
med
gwiz
-lim
baɟ
-lin
gwiz
-med
baɟ
-lin
liŋ
gwis
-seq
tig
gwiz
-lin
kob
baɟ
-lin
/peN/
/tik/
/seq/
/liN/
/met/
/kop/
/gwis/
/bac/
という8つの形態素(タイプ)が抽出できます。
/gwis/
と/bac/
に注目すると、/gwis/
はほぼ全てに出現、/bac/
は4回出現しています。このことから、/gwis/
と/bac/
は位取りのマーカー(日本語の「十」とか「百」)だと考えます。この言語の数体系がN進法だとすると、/gwis/
=N, /bac/
=N2 かなと推測できます。小さい方から4つ目まで(つまり10,20,30,40)/bac/
がついてないんだろうと思うと、40 < /bac/
= N2 < 50 なので、たぶんN=7です。
(10,20,30,40,50,60,70,80)≡(3,6,2,5,1,4,0,3) (mod 7)
を考慮に入れると、2回出現するのは/tik/
と3なので、/tik/
=3かな?と思いたくなります。そうだとすると、tig gwiz-lin
=10, tig gwis-seɢ baɟ-lin
=80となります。
また、70は7でちょうど割り切れるのでgwiz-med baɟ-lin
な気がします。それから、50は7進法で101なので唯一/gwis/
が現れないことを考えると、kob baɟ-lin
=50 でしょうか。
大きめの数で最後に残ったのは60です。/bac/
を使っているのはmed gwiz-lim baɟ-lin
だけなので、med gwiz-lim baɟ-lin
=60 かな?
ボツ理由
人工言語だから。
お知らせ
2020年度私の名刺裏ミニ問題に見事採用されました。受け取った人は漏れなく解いてください(威圧)。
文字
語対応
親族名称
その他
IOL2009-4 Old Indicの強勢付与規則
国際言語学オリンピック2009年第4問、Old Indicの音韻論の問題です。
難易度
中~やや難(所要時間:20~30分)
使う情報
・強勢位置が判明している20語
・(a)の4語が規則によって説明できないこと/(b)の12語が説明できること
手順
・2つの"heat"で強勢位置が異なることから、品詞の種類や意味は関係なさそう(ghṛ́-ṇi- vs. ghṛ-ṇá-)
・語幹と接尾辞の音節核(≒母音)の組み合わせも関係なさそう(pū́r-va- vs. dhū-má-)
・音節構造は概ねCV(C)-(C)V-っぽいので、縦に揃えた表を描いてみる。
よくわからない。共通する部分を固めて並べるようなソートの仕方がよさそうだ。
- 強勢の位置が同じものをまず固める。
- 接尾辞のVに入る母音はaかiだけである。作題のために問題作成者があえて2つに絞った可能性があるし、そうでなくともなるべく大きなカテゴリーから場合分けを始めた方がよさそうだ。従って、-a-と-i-のグループをそれぞれ固めてソートする。
・語幹の破裂音が無声か有声かできれいに分かれている。上表から、語幹に1つだけ含まれる破裂音の[±voice]と、接尾辞のVがaかiかで強勢位置が決定されると推定できる。
・小問(a)の4例は、語幹の破裂音が一意に定まらないかそもそも存在しないので上の規則が使えない。*1
関連文献
- Halle, M. (1997). On stress and accent in Indo-European. Language, 275-313.
生成音韻論の大家、Morris Halleがサンスクリットを含む印欧語族のアクセント体系について言及しています。
*1:「bhāg-a-とpat-i-はそれぞれ[±voice]が一致してるから強勢位置は一意に決まるじゃないか」となるが、上の20例と(b)の12例で破裂音が語幹に2回現れるものはないからまあ多分この解釈でよい。
IOL2018-5 アカン語の親族名称
🚨この記事は大きな誤りを含んでいます…。ごめんなさい。後で直します(2021.7.18)
国際言語学オリンピック2018年第5問*1、アカン語の親族名称(Kinship terminology)についての問題です。親族名称の類型を知っていた方が遥かに解きやすいですが、なるべく知らない体で丁寧に順を追って解説します。
てきとうなので多分所々間違っていますし、最適解でもないです。誤謬を発見された場合にはご指摘ください。
なお当然ですがこの解説は公式ではないです。
解き方
0. 文構造の解析をします。Yɛfrɛ me Xは「私はXです」または「私の名前はXです」。Yɛfrɛ me Y Zは(i)「私はZのYです」または(ii)「私のYはZです」のいずれか。ここで、Zが複数人のとき必ずYに-nomがつくことから、-nomは複数接辞であり、Yの指示内容がZである(ii)が正しいと推測できます。
さて、場合分けを少なくするために1つの仮説を導入しましょう。
[仮説]妻以外の姻族を端的に説明する親族名称は登場しない。
換言すると、「一人のエゴが端的に説明できるのは血族と妻だけ」という仮説です*2。一旦これに沿って論を進めます。当たったらラッキーですね。
親族名称の研究で、語り手となる1人称のことをエゴ(ℰ)と呼びます。本問では小問も含めてエゴが5人いて、全員男性です。
1-1. 各エゴが説明している親族の数に注目しましょう。それぞれ、EnuとKofiは7人、Kobinaは6人、Yawは10人以上、(b)-2のエゴ(未定)は6人以上を説明しています。
1-2. [仮説]に基づくと、M1からM7がそれぞれ説明できる人数の最大値は、下表のとおり。
M1 |
7 |
M2 |
7 |
M3 |
7 |
M4 |
12 |
M5 |
7 |
M6 |
6 |
M7 |
6 |
1-3. 1-1と1-2より、M4=Yawと決まります。
2-1. 残りの男性は、最大でも7人しか説明できません。よって、EnとKofはできうる限り最大数の親族を説明していることになります。
2-1-1. もしEnとKofが真ん中を境にして同じ側にいたら、重複して説明される親族が3人や4人になりそうです。
2-1-2. もし反対側にいれば、重複して説明されるのはM4(Y)とF5の2人だけです。
2-2. EnとKofが重複して説明しているのはYとAmだけです。よってF5=Am。
2-3. 2-1-2より、EnとKofは真ん中の婚姻を境に別の血族にいます。右側の血族でEnまたはKofが入れるのはM5だけです。
2-3-1. M5=Kofだと、「子供」はsewaa-baという親族名称を示す2形態素の複合語になりますが、これは少し不自然です。
2-3-2. M5=Enだと、「子供」はbaで、自然です。(本当?) このときKofは左の姻族に入ります。
[疑問]TもEnのbaである。何故?*3
3-1.[仮説]より、F3を説明できる人物はM3のみです。5つの問題文全てを通して、説明された回数が2回未満である人物はEfua(1回)です。矛盾しないために、Efua=F3とし、説明した男性Kob=M3とするのが取り敢えず最適っぽそうです。
3-2. yereは「妻」となるので、M5=Enの妻はF4=Kuとなります。
4.ここで問題文(b)-2に目を向けると、このエゴはKof, Y, Kuを説明していることから[仮説]により左の血族に属しています。Yɛfrɛ me banom Kofi...と説明しているので、エゴ(ℰ)が父でKofが息子です。これを満たすのは、ℰ=M1, Kof=M2の場合のみです。
4-1. DとKuについて考えてみます。2人はKofから同名称sewaaと呼ばれていることから、sewaaは「(父方の)おば」で、F2=Dだろうと考えられます。sewaa-baは「(父方の)おばの子」です。
4-2. Kobから見るとDとKuはどちらもɛnaと呼ばれていることから、アカン語は直系/傍系を区別しない言語であるとしてよさそうです。[→前提知識] よってɛnaは「母/母方のおば」です。
nuaの意味について考えます。6回も出現しているので、広い意味を表していそうです。
5-1. 既知のnuaを挙げよう。En→Awは「姉/妹」、Kob→Am/Yは「(母方)平行いとこ*4」。
5-2. 残りのnuaは、Kof→Es, Y→T, En→N。
5-2-1. Kof→Esについて。EsはM1かF1に入るが、父をnuaと呼んで姉妹と同一視することは通常ありえない。従って、Es=F1と考えるのが妥当。残り物はO=M1。よってwɔfaは「(母方の)おじ」、agyaは「父」、nuaは「姉/妹」を示します。
5-2-2. Y→Tについて。Yの姉妹はAmに決まっているので、nuaが「平行いとこ」を表すのであればF6=T。この場合「父方平行いとこ」を表します。
5-2-3. En→Nについて。NはM6かM7、つまりEnの兄弟か甥であるが、これまでのnuaの指示内容を検討すると「兄弟」の方が合理性が高い。よってN=M6とすると、B=M7。
まとめると、nuaは「兄弟姉妹」または「平行いとこ」。
6. ここで、En→Bは「妹の子」wɔfa-aseとなるが、これが「母方のおじ」wɔfaの逆であると考えると辻褄が合います。
以上まとめると、
M1 |
Ofori |
M2 |
Kofi |
M3 |
Kobina |
M4 |
Yaw |
M5 |
Enu |
M6 |
Nsia |
M7 |
Berko |
F1 |
Esi |
F2 |
Dubaku |
F3 |
Efua |
F4 |
Kunto |
F5 |
|
F6 |
Thema |
(F7) |
(Awotwi) |
ɛna |
母/母方のおば |
agya |
父[+(推測)父方のおじ] |
ba |
子供/兄の子 |
yere |
妻 |
nua |
姉妹兄弟/平行いとこ |
wɔfa |
母方のおじ |
wɔfa-ase |
妹の子(母方のおじ-逆) |
sewaa |
父方のおば |
sewaa-ba |
父方のおばの子(父方交差いとこ) |
前提知識
親族名称の類型*6
日本語や英語とは異なり、おばのことを「母」と呼んだり、従姉妹のことを「姉/妹」と呼んだりする言語が数多く存在します。人類学者はこれらをいくつかの類型に分けることを試みました。
Lowieは、性別, 直系/傍系, 双岐性(父方か母方か)の3つのうちどれを区別の基準に含むかで親族名称の類型が決まると考え、4類型を立てます。さらに、Murdockは姉妹、平行いとこ、交差いとこの名称における言語間の差異を加味し6つの類型を立てました。
では、アカン語はどれにあたるでしょう? Lowieの類型では、母と母方のおば、父と父方のおじを同一視しているので、直/傍の区別がない双岐合併型にあたります。一方Murdockの類型では、姉妹と平行いとこを同一視し、交差いとこについては父方と母方にそれぞれ別の名称を与えているため、どの類型にもあたりません。
IOLの親族名称問題を解く際には、Lowieの類型に当てはめて考えることは十分に可能です。但しいとこの区別を考えるときは、Murdockの類型は全てを尽くしている訳ではないので、その時々で柔軟に考えるのが良さそうです。
問題
日本語の親族名称体系は、
(1)どの類型に属していますか?
(2)親族を区別する基準は何ですか?(上に挙げていないものもあります)