言語学わからない

言語学オリンピックの解説や、(権利的に大丈夫そうなら/許諾がとれれば)各国予選問題の翻訳を載せます

IOL2009-4 Old Indicの強勢付与規則

国際言語学オリンピック2009年第4問、Old Indicの音韻論の問題です。

難易度

中~やや難(所要時間:20~30分)

使う情報

・強勢位置が判明している20語
・(a)の4語が規則によって説明できないこと/(b)の12語が説明できること

手順

・2つの"heat"で強勢位置が異なることから、品詞の種類や意味は関係なさそう(ghṛ́-ṇi- vs. ghṛ-ṇá-)
・語幹と接尾辞の音節核(≒母音)の組み合わせも関係なさそう(pū́r-va- vs. dhū-má-)
・音節構造は概ねCV(C)-(C)V-っぽいので、縦に揃えた表を描いてみる。

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Fig.1 とりあえず並べてみる
よくわからない。共通する部分を固めて並べるようなソートの仕方がよさそうだ。
- 強勢の位置が同じものをまず固める。
- 接尾辞のVに入る母音はaかiだけである。作題のために問題作成者があえて2つに絞った可能性があるし、そうでなくともなるべく大きなカテゴリーから場合分けを始めた方がよさそうだ。従って、-a-と-i-のグループをそれぞれ固めてソートする。

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Fig.2 強勢位置と接尾辞のVでまとめてみる
・語幹の破裂音が無声か有声かできれいに分かれている。上表から、語幹に1つだけ含まれる破裂音の[±voice]と、接尾辞のVがaかiかで強勢位置が決定されると推定できる。

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Fig.3 規則
・小問(a)の4例は、語幹の破裂音が一意に定まらないかそもそも存在しないので上の規則が使えない。*1

関連文献

- Halle, M. (1997). On stress and accent in Indo-European. Language, 275-313.
生成音韻論の大家、Morris Halleがサンスクリットを含む印欧語族のアクセント体系について言及しています。

*1:「bhāg-a-とpat-i-はそれぞれ[±voice]が一致してるから強勢位置は一意に決まるじゃないか」となるが、上の20例と(b)の12例で破裂音が語幹に2回現れるものはないからまあ多分この解釈でよい。